御召の事典テキスト元(**社刊・書籍『御召』のP**より抜粋しました)
●足踏機(あしぷみき)
織機の一種で足の運動だけで綜桃(そうこう)、筬(おさひ)、抒を操作するもの。それ以前の.バッタン機に比べて、手の操作が楽になった。手機(てばた)から力織機への過渡的な織機といってよい。一八〇二年、イギリスのレイデクリフが発明、わが国では明治二年(一八六九) に中津川藤吾が考案し、第一回内国勧業博覧会で受賞したのが最初といわれている。
●薄物御召(うすおめし)
糸づかいや織り方に工夫をこらし、盛夏用に作られる御召。さらっとした風合が特徴である。薄物の一種だが、絹や紗、上布のような本格的な薄物ではない。
●打込み(うちこみ)
織物の緯糸(よこいと)の密度のこと。「打込みがあまい」とか「打込みが悪い」というふうに、地風を表現する。
●ウール御召 (ウールおめし)
絹にかわってウールで織った御召ということだが、しかし本来、御召は「御召縮緬」 のことである。つまり地が縮緬だが、ウール御召は縮緬ではない。ウール地に御召の感じを取り入れた先染のウール織着尺と考えれはよい。御召のイミテーションともいえるが、むしろ御召とはまったく別のもの、といったほうがよさそうだ。
●絵緯(えぬき)
紋織物の色模様をあらわすため、緯糸(よこいと)として用いる色糸や金銀糸のこと。「色緯(いろぬき)」 「縫取糸(ぬいとりいと)」「色糸(いろいと)」などともいう。縫取御召などにも使われている。
●絵緯御召(えぬきおめし)
緯糸に使う色糸のことを「絵緯」というが、この絵緯を用いて模様をあらわした御召。また「絵抜御召」と書くこともある。
●絵羽御召(えばおめし)
模様を絵羽づけにした御召のこと。絵羽とは、きもの全体を一枚の画布にみたてて模様づけしたもので、もともとは染めのきものに対して行なわれる抜法である。御召を豪華にするため、織模様を絵羽にしたものだが、生産量は少ない。
●寂(おさ)
織枚の部品。経糸(たていと)を通して一定の幅に揃えておくものだが、同時に経糸の位置を整えて、緯糸(よこいと)を織り込むのを都合よくする道具である。昔は薄い竹片を櫛(くし)の歯のように連ねたものを使っていたが、現在ほ金属製が圧倒的に多い。
●御召(おめし)
「御召縮緬」の略。先練り先染めの高級な絹織物で、縞御召や絣御召のほか、無地御召、紋御召、見通御召、絵緯(えぬき)御召、縫取御召など、種類が多い。それだけに技法的にも少しずつ異なるが、白縮緬と同じように緯糸に強い撚りをかけて織り、最終的にはその撚りを戻して、布面に細かいシワ(シボという)を作り出した織物、という点では共通している。
まず経糸(たていと)は「諸撚(もろよ)り」をかけ、「精練」「染色」を行なう。縫糸は「下撚り」(右撚りと左撚りとがある)をし、「精練」「染色」を行なってから「糊づけ」「張り糸」をして、さらに撚糸機で「強撚」々かける。そのあと経糸は「糸繰り」「整経」を行ない、緯糸「糸繰り」「管巻(くだま)き」をする。これらの経糸、緯糸を織機にセット(機拵えという)し、織るわけだ。
織り上げたあと、湯で洗って「シボ寄せ」を行なうほか、糸を撚っているために織幅が縮むので、湯のしをし、「幅出し」をして仕上げる。
もともと「御召縮緬」は「柳条(しま)縮緬」と呼ばれていたもので、色彩も茶系統、鼠系統、藍系統と、意外に質素な渋いものであった。「御召」という名称は「御召羽二重」 「御召小葵」のように、天皇や将軍の御召料として用いられる織物につけられていた総称であり、柳条縮緬のごく上等なものが御召料とされたために「御召縮緬」と呼ばれるようになった、と考えられている。 とくに、この御礼縮緬を好んで着用したのが十一代将軍・徳川家斉(在職一七八七 〜一八三七)で、納戸地に白の万筋があり、二分(約七ミリ)おきに横筋のある格子柄を将軍専用の「留柄(とめ)」にしたほどであった。
●御召緯(おめしよこ)
御召の緯糸に使う強撚糸のこと。
●御召糊(おめしのり)
うどん紛や正麩(しょうふ)、わらび粉などを混ぜて作った糊。強い撚りをかけた緯糸(よこいと)に、この糊をつけて織ったあと、糊を落とす。
●餅(かすり)
織物を構成する経糸(たていと)、あるいは緯糸(よこいと)、または経緯の糸の双方の柄になる部分を、他の糸で堅くしばって染めた糸で織った平織の織物。御召や紬のほか、木綿絣が有名だし、上布などにも絣柄が織り出されている。柄がかすれて表現されるところに特色があり、また絣の美しさも、そのかすれた部分にあるといえよう。
●絣糸(かすりいと)
絣柄の部分を白く染め残したり、逆に絣柄の部分を染め、地を白くするなど、要はまだらに染めた糸のこと。「縞糸」という地方もある。この絣糸を作る基本技法は「手括り」だが、防染材(括るもの)は綿糸のほか、クラフト紙やゴムなどが使われる。
●絣御召(かすりおめし)
絣柄を織り出した御召。木綿絣や紬絣などと同じ技法によるものだが、異なるのは縮緬地でシボがあらわれている点だ。明治、大正、戦前まで、多くの女性に愛好されたものの一つに矢羽根を織り出した紫の矢絣がある。これなど絣御召の代表だったが、しばらく姿を消し、最近ふたたび復活してきた。ほかに「立湧」「壷だれ」「猫足」 「井桁」など、単純明快な柄が多い。
●絣結り(かすりくくり)
絣糸を作るために、柄にしたがって糸のところどろをしばること。「絣糸」の項参照。
●綛(かせ)
糸を連続したまま一定の長さの輪にし、たばねたもの。糸を扱いやすくすると同時に、糸の長さを計算しやすくするためにこうしておく。
●壁御召(かべおめし)
緯糸に壁糸を用いて織った御召のこと。壁糸というのは「壁撚りしと呼ぷ撚りをかけた糸で、織り上がりは地風がさらっとし、ふつうの御召よりシボが細かいのが特徽。一種の御召のイミテーションである。
●生糸(きいと)
マユから取ったままで、精練しない絹糸のこと。マユから取り出した細い糸を七〜十本ほど合わせたものから、さらにそれを二〜六本合わせたものまで、さまぎまな太さがある。いずれにしても糸のまわりのセリシン (膠質)を取り除く以前のものを「生糸」という。セリシンを取り除いた糸は「練り糸」である。
●絹(きぬ)
蚕の萌から取った織維、またその織物のこと。特徴は光沢があって染め上がりが美しく弾力のある点だ。衣服の素材として、これ以上のものはない。ところで蚕だが、これは「鱗麺目(りんしもく)カイコ蛾科カイコ蛾」の幼虫で、桑の菓を食べて成長する。前後四回の休眠(脱皮)を経て繭をつくり、サナギになるが、ここで熱気に当てて内のサナギを殺す。そのあと繭を熱湯で煮て、糸を取り出すわけである。
一本の糸は外径が八〜二十五ミクロン(一ミクロンは千分の一ミリ)という細かいもので、一個の繭に二本ある。これを教本合わせて一本の糸にしていく。一個の繭から取れる糸の長さは、明治の頃には約五百メートルだったが、現在は千メートルから千五百メートルである。
●絹織物(きぬおりもの)
絹糸を使った織物のこと。大別すると「後練り」のものと「先練り」 のものとに分けられる。後練りとは縮緬や羽二重のように生糸で織ってから精練するもの。先練りとは御召や紬のように生糸を精練、糸染めしてから製織するものである。
●強撚糸(きょうねんし)
強い撚りをかけた糸。一メートル間に三千回から四千回くらいの撚りがかけられる。
●交織御召(こうしょくおめし)
経糸と緯糸との糸質を変えて織った御召。しかし本来の御召とは異なり、御召風の織物といったほうがよい。経糸にウールを使ったウール御召、人絹を使った人絹御召のような大衆製品が多いが、御召緯と紬糸の二種類の緯糸を用いた上代御召のようなものもある。
●交織織物(こうしょくおりもの)
絹と木綿、絹と化合織というふうに、質の異なる織維をまぜて織った織物。大衆的なきもの地に使われる。
●合成染料(ごうせいせんりょう)
十九世紀中頃、イギリスのバーキソがコールタールから化学的に作り出した染料。日本で初めて輸入されたのは江戸の末期で、明治以後、急速に普及した。現在では、ほとんど大部分が合成染料で染められている。「人造染料」 「化学染料」ともいう。
●ゴブラン御召(ゴブラソおめし)
ゴブラン織の模様や感じを取入れた御召。ゴブラン織とは十五世紀、フランスのゴブランによって初めて織られた多彩な美術織物で、わが国の綴織と同じ織技法を用い、手織りでつくられる。
●駒撚糸(こまよりいと)
撚りの強くかかった糸のこと。「駒撚御召」「駒絽」というように使われる。
●先染織物(さきぞめおりもの)
布地に織る前、糸の状態で染めてから織ったもの。後染織物の反対である。御召をはじめ、紬、上布、絣など、いわゆる織りのきものは「失染織物」である。
●縞御召(しまおめし)
縞柄を織り出した御召で、もっとも御召らしい御召である。その起源は江戸時代「柳条縞緬」として、関東の桐生にはじまるという。つまり徳川家斉の御召物とされて著名になったわけで、現雀の「御召」の源をなすものといってよい。男女の区別なく、また年齢を問わず、粋なきものとして愛されている。「御召」 「柳条御召」の項参照。
●柳条縮緬(しまちりめん)
江戸時代の天和年間(一七八一〜一六四二)頃から織られた縞模様を織り出した縮緬。この「縮緬」は天正年間(一五七三〜一五九二)に中国の織工が和泉(大阪府)の堺へ渡来して技術を伝え、それ以来、国産されるようになった。「縞縮緬」とも書いた。「御召」の項参。
●シボ寄せ(しぼよせ)
「シボ」というのは布面にあらわれる細かいシワで、これが御召の特故になっている。織り上がった布を湯につけると、緑糸の撚りが戻って、シワができる。この作業を「シボ寄せ」、あるいは「シボとり」という。 このシボによって御召の風合がきまるの で、丹念に行なわれる。
●ジャカード
フランスのジョセフ・マリー・ジャカール(一七五二〜一八三四)が一八〇〇年に発明した紋織装置。小孔 をあけた厚紙、数百枚を綴り合わせ大型紡(紋紙)を機の上に掛け、その紋紙による経糸の操作によって、複雑な文様を織ることができる。このジャカードが発明されたため、従来に比べて紋織の織る能率が四倍もアップしたといわれる。
わが国へは明治五、六年、初めて京都西陣へ伝えられた。その後、明治二十年頃までに桐生、足利、福井、米沢などに普及していった。
●上代御召(じょうだいおめし)
交織の特徴を生かした高級織物。縫糸に御召経と紬糸の二種を用い、紬風の素朴な地風を出している。紋織と紡織とがあり、色彩も柄も多様ながら、上品な街着に適している。
交織といえば、すぐ粗悪品と思いがちだが、これは素材によっては、すばらしい御召が出来るというよい見本だ。
●人絹御召(じんけんおめし)
人絹とは人造絹糸の略で、化学紡維を含めていうこともある。人絹御召は凝糸に人絹を使ったもの。第一次大戦後の不況に対応して、桐生などでコストを下げるために盛んに作られた。交織御召の一種で、安さ価だが、縮みが激しい。
●整経(せいけい)
機にかける前に、経糸(たていと)を一定の長さと本数に分ける作業。
●精練(せいれん)
マユから取り出した絹糸は、セリシンという膠質(にかわ)のものでおおわれていて、このままでは硬くて艶がない。これを石けんソーダ液などで煮て取り除くのだが、この工程を「精練」という。または「練(ね)る」ともいう。精練には織る前、糸の状態で行なう「先練り」と、織ってから行う「後練り」とがある。友禅染などに使う自縮緬は後練りだが、御召は先練りである。
●セル
ウールの先染め和服地。縞や格子、霜降りの柄が多く、その感触が柔らかいことから、戦前までは男女ともに着尺、羽織、袴地などに広く愛用されていた。春先や秋口の季節の変り目に着るいわば合着で、「セルの頃」という季節語さえあったほどだ。毛織物の「セルジ」「サージ」から日本語に転化した言葉。
●綜銑(そうこう)
織具の付属品の一種。経糸を上下に開きわけるもの。いいかえると緯糸を入れるために抒(ひ)の通りみちをあける道具である。古代では「綜」といい。地方によって「綾(よこ)」「綾(あや)取り」「遊び」 「掛糸(かけいと)」などと呼はれる。
●空引機(そらびきばた)
紋織に使用した織機の一種。高機に「空引」という装置をつけたもので、紋紙を使う紋織機が出現するまで使われた。 織物を織るのに必要な最小限度の道具といえば、経糸(たていと)を張っておく装置、緯糸(よこいと)を通すためのロを開く綜絖(そうこう)、さらに経糸の間に緯糸を通したり、緑糸を平行に固く経糸の間に打ち込んだりするための抒(ひ)や筬(おさ)などだが、紋織にはきらに多くの綜絖が必要になってくる。
また、多くの綜絖を操作するために、高機の上部に鳥居状の構造のものを取り付け、これに大通糸をつるしてある。この紋織の装置を「空引」(花楼装置ともいう)といい、その機を「空引機」と呼んでいる。大通糸を操作して経糸を開口させ、緑糸を通して模様を織り出していくわけだが、操作が複雑なため、一人では操作することができず、一〜二人の補助者が必要になる。
●高磯(たかばた)
居坐機より織手のすわる位置の高い手織機。居坐機と異なり、経糸が機に固定されているため、体を前後に動かして糸の張りを調節する必要がなくなった。したがって、地合が均一したものが織られるようになり、能率も高くなった。
●経糸(たていと)
織物の長さの方向の糸で、織機にあらかじめ張り渡たしておく。そこへ経糸と直角に緯糸を組合せ(緯打ちともいう)、これを繰り返して布を織っていくわけである。
●?(ちきり)
織機の部品の一種。経糸を巻く円筒形の棒である。
●縮緬(ちりめん)
高級染め下生地.経糸に生糸、緑糸に強撚糸を使って織ったもの。そのあと精練すると、強撚糸の撚りが戻って、縮んでしまう。この縮んだ布面の凹凸をシボといい、これが縮緬の特徽である。このシボがあるために、光線の乱反射によって染色効果が高まるし、実際に染め上がりもよい。
かつては輸入に頼っていたが、天正年間(一五七三〜一五九二)に中国の織工が和泉(大阪府)の堺へ渡来して技術を伝え、それ以来、国産されるようになった.現在、主な産地は丹後と長浜で、シボ立ちの大小によって、一越縮緬、古浜縮緬、鬼シボ縮緬などがあり、ほかに縫取縮緬、紋意匠縮緬、絶縮緬など、さまざまな種類のものが作られている。
●手織り(ており)
「手機(てばた)」ともいう。人間の手や足の動き、その力を利用して経糸と緯糸とを交叉させて、織物を作ること。その織機が「手織機しで、最も原始的な「居坐機」と「高機」とがある。最近ではきわめて少ない。
●手機(てばた)
人間の手や足の動きと、その力を利用して経糸と練糸とを交差させ、織物をつくる織機。そのもっとも原知的なものが居座機で、このほか織機に脚がつき、腰かけて織る高機と呼ばれる手機もある。
●デニール
生糸や人絹などの太さの単位.四百五十メートルの糸が五十ミリグラムのものを一デニールとする。しかし絹糸では、実際にそのような細い糸はなく、ふつう繭から取れる糸で二〜四デニ−ルである。「二十一中(なか)二本駒」という呼び方をすることがあるが、これは二十ニデニールの絹糸を二本合わせ、駒撚りにした四十二デニ−ルの糸のこと。
●留柄(とめがら)
「御留柄」ともいう。ある特定の文様を独占して、他人の使用を許さない柄のこと。江戸時代(一六〇三〜一八六七)、将軍家をはじめ、各地の大名はそれぞれ占有した小紋柄を持っていた。
●縫取り(ぬいとり)
刺繍(ししゅう)のこと。繍は針で縫うことであり、繍は布を色で装飾することだ。すなわち、さまざまな色糸で布地の上に、文様を縫い綴ることを「縫取り」というわけである。単に「縫い」ともいう。
●縫取御召(ぬいとりおめし)
御召のなかでは比較的新しいもので、金銀糸を刺しゅうのように縫取った紋御召の一種である。地組織となる緯糸のはかに、小さい抒を用いて文様の一部をさらに加工するなど、多彩で複雑な文様が織り出されている。
●練り(ねり)
生糸のまわりのセリシン(膠質の物質)などを取り除くこと.「精練」と同じ。
●練減り(ねりべり)
生糸を精練すると、セリシン(膠質)などが落ちるが、それだけに目方も減るわけで、これを練減りという。ふつう精練する前に比べて二〇バーセソトくらい減る。
●糊づけ(のりづけ)
御召の工程で欠かかせないもの。精練、染色したあと緑糸に糊をつけるわけだが、その目的は@練減りをおぎなう、A強撚をかけたとき撚りが戻るのを防ぐ、Bシボ出しを効果的に行なう1などである。ふつう糊はデソプン糊、姫糊(ウルチとワラビ粉で作る)、合成糊などを使う。
●バッタン
抒(ひ)に紐をつけ、その紐を引くと滑車によって抒が送り出され、左右運動を繰り返す飛抒装置のこと。−七三三年、イギリス人のジジョン・ケイル、によって発明された。わが国へは明治初期に輸入され、明治十年代から次第に地方へもジャカードとともに普及した。
それまで緯糸(よこいと)を通すのに、左右の手を交互に使って抒を投げていたが、バッタンの登場で片手が解放されたため、能率は倍加した。また、手による投抒と異なり、自動的に抒が移動するため、熟練した技術なしに均一した品質が得られるようになった。
●羽ニ重(はぶたえ)
平織の高級織物。糸質のよいものが使われるため光沢があり、肌ざわりもよい。もともとは白衣として下着の重ねや、貴族、上級武士の寝巻き、白装束などに用いられた。
最近、着尺は少なく、喪服や男性の式服に用いられるほか、重目の帯地用のものがある。この「羽二重」の名称は、経糸(たていと)を筬(おさ)羽一目のなかに二本を引きそろえて織るところから出たという。
●抒(ひ)
木製の舟形をした織機の付属晶の一つ。居座機では中央に管室をもった大抒(一幅分もある)で、緯糸は中央上部の管に巻かれてある。この大抒はの経糸の中をくぐらせて経糸を通しながら下部の刀状になった部分で、緯糸を打ち込んでいく。高機では小抒で、緯糸の打ち込みは筬が行なう。
●漂白(ひょうはく)
糸の不純物を薬剤などで取り除き、白くすることで、むかしは「漂(さら)しといった。
●平織(ひらおり)
綾織(斜文織)、朱子織(繻子織)とともに織物の三原組織の一つ。もっとも単純なもので、経糸と緯糸とを一本ずつ交互に織る技法、あるいは織ったものをいう。単純な技法だけに古くから行なわれ、現在も幅広く用いられている。
●風通(ふうつう)
表と裏に異なった色糸を用い、表と裏の文様が反対の配色になる織物。「二重織」ともいう。七、八世紀に中国から伝えられたが、国産化したのは天正年間(一五七三〜一五九二)のことだという。比軟的小さい形の石畳文などが、表わしやすい。着尺地などに用いられている。
この「風通」の名称は、二重組織のために表と裏に文様の配色が逆にあらわれるところから、いかにも袋状に織られているように見え、そのなかを風が通る、という意味でつけられたという。
●風通御召(ふうつうおめし)
風通織という特殊な二重組織で織った御召。つまり二重の経糸、緯糸を用いたもので表と裏の文様が反対の配色になる。上品な感じの中柄や小柄が多い。「見通」の項参照。
●無地御召(むじおめし)
無地とは染めてない自生地、あるいは文様をつけない一色染のことをいう。したがって無地御召というのは、色無地(一色染)に織られたものである。なお、この無地御召に捺染したり、刺繍をほどこしたりしたものを「加工御召」という。「御召」の項参照。
●諸撚り(もろより)
二本以上の糸を撚り合わせること。こうして出来た糸を「諸糸」という。
●紋紗召(もんおめし)
文様を織り出した御召。ふつう単色が多く、比軟的地味な紋織着尺地である。
●紋織(もんおり)
文様を織り出した織物のこと。したがって絣や縞、あるいは綴など、文様を織り出している点で紋織といってもよさそうだが、ふつうはいわない。一般的に紋織というのは、ドビーやジャカードのように、織機に文様を織り出す装置をつけた機(はた)で織ったものを指している。
●故紙(もんがみ)
ジャカード機(紋織機ともいう)に取り付けるもので、ポール紙に模様の組織にあたる部分を穴であけた型紙。パソチカードのようなものである。この紋紋を機械的に操作することによって、経糸(たていと)が上下に動き、そこに緯糸(よこいと)を通して模様を織り出していく。数多くの紋紙を使うにしたがって、複雑な柄になり、場合によっては数千枚の紋紙が使われる。
●紋彫り(もんほり)
「紋切り」ともいう。紋紙を作ることである。ふつう図案家によって作られた図案を意匠家(星屋ともいう)が意匠紙(方眼紙)に柄組織を色分けし、まず織物の基本を作るさらに紋彫臭が、この意匠紙をもとにしてピアノマシン (穿孔機)で、紋紙(ボール紙) に紋彫りを行ない、これを綴り合わせる。ふつう二千〜二千枝で一柄の緯糸の本数に相当する。
●緯糸(よこいと)
織物の幅の方に織り込む糸のこと。「ぬきいと」とも読むほか、略して「ぬき」ともいう。
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