桐生タイムス1997年(平成9年)11月7日(金曜日)掲載
t9117.jpg 10月30日から3日にかけて有鄰館味噌・醤油蔵で展示されたからくり人形。期間中は桐生市民はもちろん、北海道や神奈川県横須賀市など遠方からの見学者も殺到した。2日には来桐した専門家たちが会場でからくり人形への思いを語った。
 詰めかけた大勢の人たちが周りを囲む中でスピーチしたのは、日本人形センター前理事の宇野小四郎さん、国立科学博物館理工学研究部の鈴木一義さん、国立劇場芸能部の西角井正大さん、同志社大学文学部教授の山田和人さんの4人。
 「からくり芝居は明治になって終わりを迎え、これまで現物が残っていなかった。『どんなものだろう』と思っていたら、何と桐生で見つかった。全国でも桐生にしかない、大切なもの」(宇野さん)
 「江戸ではじまったからくり芝居は、当時は歌舞伎や浄瑠璃と同じ庶民の芸能だったが、歌舞伎のように芸術の分野に溶け込むことができずに消えていった。それが完全なフルセットで残っていて、しばらく絶句した。空白だった芸能史の1ページを埋める存在」(鈴木さん)
 「人形を拝見すると、色もあせておらず、カビもなくて素晴らしい保存状態。日本の文化のためにも大切にして、みなさんの努力で実際に動かせるようにしてほしい。桐生で御開帳に使われたとういだけでなく、『人形を動かしたい』という人間の古来からの思いを継承していることも記憶してください」(西角井さん)
 「絵画資料ばかり見ていて、『絵が動いてくれたらどんなプラスになるだろう』といつも考えていた。
背景のセットや映像資料、当時の音楽まで残っているのは奇跡としか言いようがない。文化史の中でも希有(けう)な例」(山田さん)と、口々にその貴重さと重要性を絶賛した。
 この日は昭和36年のフィルムが上映される予定にもなっていたが、機械の故障によって残念ながら中止に。からくり人形研究会(山鹿英助代表)では今後、フィルムをビデオなどの別媒体に保存し直すことにしている。
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