桐生タイムス1997年(平成9年)10月30日(木曜日)掲載
1t91030.jpg2t91030.jpg 桐生天満宮の御開帳臨時大祭が挙行されるたび、各町内で興行された「からくり人形」。その隆盛を伝える新資料が見つかった。白絹地に印刷された引き札で、出し物の記録と照合したところ、大正五年のものとわかった。有鄰館で開催中の「からくり人形展」で公開されている。
 この絹の引き札は県内の古書店から市内本町四丁目の奈良書店に持ち込まれ、からくり人形研究会の山鹿英助代表の手にわたった。大正五年にからくり人形を見物しに来た人が記念に買い求めていったものらしく、八十年ぶりに桐生に戻ってきたことになる。
 袴(はかま)姿の女性たちが歩く天満宮境内を中心に、五丁目では「戻り橋」、三丁目は「勿来関」、二丁目では「安達ケ原」、常木稲荷境内では「児雷也」など、十の出し物が各所で演じられていたことがわかる。
 奈良彰一さんによるとこの引き札は、紙に印刷された銅版画を絹にプリントしたものではないかという。紙版で同様の引き札がどこかに眠っている可能性もある。
 この年の「飾り物引き受け人」は、前回の明治35年に続いて「深津芳五郎」。山鹿さんは「粕川の人で、桐生の玩具店『花芳』に関係していたのではないか」と見ている。ちなみにこの時までは、水車動力でからくりを動かしていた。
 からくり人形自体、国の重要文化財クラスの貴重なものだという折り紙付きだが、まだまだ関連資料が埋もれていると思われ、研究会では情報提供を求めている。人形は背景とともに11月3日まで、有鄰館味噌・醤油蔵で展示公開中。
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