桐生タイムス1998年(平成10年)9月19日(土曜日)掲載
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 桐生からくり人形研究会(山鹿英助会長)の面々が、南国・土佐に飛んだ。高知県立歴史民俗資料館で開催中の特別展「からくりー夢と科学の世界・細川半蔵とその時代」に集まった全国のからくりを調査し、出品中の「忠臣蔵」「助六由縁江戸桜」などの桐生からくりと対面するためだ。専門家が「気絶するほど貴重」と評した桐生の資料は、確かに唯一無二の希少価値でメーンに据えられていた。現在その再現復活に取り組むわが研究会。江戸のからくり名人・細川半蔵を生み、その科学精神を現代先端技術に生かしている土佐っ子たちからもエールを受け、「これが動けば世界の桐生からくり芝居になる」「祇園屋台といっしょにやれば、すごい祭りができる」と夢を羽ばたかせていた。*************************************

 全国に残る茶運び人形など個人向けの「座敷からくり」や、祭礼用の「山車からくり」、そして大衆芸能としての「からくり芝居」「のぞきからくり」が一堂に集められたこの特別展。土佐が生んだ細川半蔵(生年不詳ー1796年)にちなむもので、その名著『機巧図彙(きこうずい)』の科学する心は時計、天体望遠鏡、測量、エレキテル、鉄砲、写真などにもつなげて展示されている。二百年前の「天下泰平」の世にあって、先端技術はまず、おもちゃや娯楽を通して人々の耳目を驚かせたわけだ。
 七月中旬から開幕した今展は、まもなく入場者二万人を突破するという。「子どもたちに夢をもってほしい」と学校を通じて積極的に呼びかけたこともあるが、“静”のイメージが強い博物館で人形が動くことへの興味が、通常の四倍の人気となっているようだ。一日に一、二度行われる実演には、老若男女がひとみを輝かせ声をあげて喜んでいた。同じ動きをきちんと繰り返す西洋人形と違って、「弓曳(ゆみひき)童子」が的をはずすのもご愛きょう、なかなか降りない「段返り」に声援をおくるのも楽しいのだ。
 また現代版からくりとして、農機具メーカーのもみすり機や機械製作所の無振動釘(くぎ)打ち機、高専学生による木琴自動演奏ロボットなども展示。地元産業界のいまにつなげる工夫があった。
 そうした中で、桐生からくり芝居は独立した複数の精巧な人形は、大きな舞台セットの上にいまにも動き出しそうな迫真性で居並ぶ。「年配の方は歌舞伎の場面を思い浮かべて楽しんでいます」とのことで、「どうやって動くのかしら」と興味を示す人も多いという。

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