自然のハーモニーを縞にたくす・腰塚真由美

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手織り縞の未知なる芸術の探求2

腰塚眞由美
Mayumi Koshitsuka

色は無限の世界 「幾何学模様も縞におきかえられるのではないか」という問いかけをいただいてから、様々な方法で縞をつくることに取り組んで来ました。

先ず、美しいと思う草や花、ガラス玉、雑誌の切り抜きなどから、そのものの持つ色を引き出し、分類する作業をはじめました(写真資料1・2)。 自然の持つ色彩とそのハーモニーのすばらしさは感嘆するばかりです。例えば、木の葉の重なりや芝生の色は、光の当たった明るい部分と暗い部分では色が異なります。また、赤い花では、光の当たった部分はやや朱色に近い黄みの赤に、花弁の重なった暗い部分は紫みの赤に見えます。

 よく観察してみますと、光の当たり方やそのもののもつ素材感によっても色は異なって見えるのです。また、夕焼けの空の様に徐々に変化していく無限の色の段階にも目をみはります。 そのように観察や資料に基づいて、一つの画面を構成していきますが、その時に大切なのは、色のもつイメージや性格をよく把握することです。例えば「霞が立つ」というイメージを表現するときには、鮮やかな強い色は使わず、薄い淡い色を使います。

そういう色の感じ方の特性を「トーン(色調・色の調子)」といいます。「濃い」「明るい」「くすんだ」などの修飾語をつけて表わします。それを色票と照らしながら染めわけることにしました(写真資料3)。 

基本となるのは、さえた色(vivid tone)の赤・黄・緑・青・紫です。さえた色は、単色の染料でしか染めることができません。なぜなら混色によって、彩度も明度も低くなってしまうからです。そして徐々に薄く、また 濃くしていきます。

灰味の色群は、色相を変えないように注意しなければなりません。C・C・M(コンピュータカラーマッチングシステム)で検色し、染料配合のデータを出していただきながら、写真資料4の実験をすることができました。

 ほぼさえた色である、黄とやや緑みの黄・黄みの黄緑の三色相を染めました。各々について暗い(dark tone)・深い(deep tone)を染め、にぶい(dull tone)黄色を加えました。これは、色彩学的に言えば「類似色相の配色」になります。

色相環(赤−黄−緑−青−紫を基本とし視覚的心理的に連なる色の環/PCCSによる)の上で、近い色相の配色です。

アクセントとして、にぶい青みの緑を使いました。色による丸みの立体感と、奥行きとリズムを感じていただけるなら幸いです。写真を縞に具象を直線に 写真を縞におきかえるというテーマをいただけたのはとても興味深いことでした。

美しい写真の色合いと、その分量バランスを学ばせていただくことができたからです。

具象ののものを直線におきかえることの力強さを意識しました。(桐生織塾/こしづか・まゆみ)

[写真からイメージした縞の作品]は20・21頁にカラー写真で紹介しています。手織り縞の未知なる芸術の探求1縞を創り縞と遊ぶ桐生織塾武藤和夫世界の縞と遊ぶ縞展の企画 桐生織塾の縞展がパートT・U・Vで完結しました。

 縞は二色以上の色を平行した直線で区分したデザインの中では最も単純なもので、竪縞、よこ縞、格子があります。 このどこにでもある身近な縞文様、世界各国の民族衣裳に見られる縞、また織塾で新しくつくった縞などをとおして、色・デザインの世界で遊んでみようと縞展を企画しました。

 いまはデザインの時代と言われています。差別化・オリジナル化と、デザインの重要性がより強調されています。そして現代社会が機械化され、情報が錯綜し、五感に訴える音、色が氾濫している時代には、鋭い直線だけのデザインである「縞」がかえって安らぎさえ感じさせてくれます。

 縞展「パートT」では世界の民族衣裳の縞、日本の着物の縞、桐生の縞お召、国内各地の地縞、大正期の縞サンプルを展示しました。 世界各国の民族衣裳に用いられる縞はその国民性や用途により、力強さや繊細さが特徴的に表わされています。例えばスコットランドのタータンチェックや、衣裳ではないが国の象徴である国旗に用いられる縞は氏族や民族のシンボルですから、鮮明で力強く、しかも人間の個人・集団の意識を現わすことのできるデザイン(縞)となっています。また衣裳に用いられるものは暖か味のあるものが多くみられます。

 わが国大正期の縞、特にお召に見られる縞は粋≠フ言葉がぴったりです。九鬼周造の名著『いきの構造』の中で、粋≠ニは日本民族が持つ独自の美意識で、江戸の爛熟した文化の中で生まれ、その芸術表現の代表が「縞」であると言っています。そしてその美意識は明治から大正・昭和へと受け継がれてきました。江戸の元禄や化政の時代と大正デモクラシーの時代が、縞の粋をとおして重なって見えてくるようです。

風景・絵画・写真・音楽らが創造の泉 縞展「パートU」では「新しい縞づくり」をテーマとしました。 縞を集め、縞をつくってきましたが、縞ほどむづかしいものはありません。織物のデザインには幾何文様、草花文様など抽象・具象の各文様がありますが、その色彩や柄が縞ほど敏感に良し悪しや好みに関係するものはありません。それも極端なのです。単純なデザインだけに色やその量(幅)が直接的に響いてしまうからでしょう。

良い縞、好まれる縞を作ろうとすると私の場合は最後は唐桟縞に近づいてしまいます。特に着物がそうですが。日本人の縞の故郷が、南蛮紅毛交易によってもたらされた縞にあるような気がしてなりません。

 人間の五感に訴えるものすべてにいい感じ、いやな感じがあるとすれば、美しさやいい感じをうける自然風景や絵画・写真・音楽を縞のデザインソースにしたら、古き唐桟縞にしばられない新鮮な縞づくりができるのではないかと考えました。 美を感じ、心の琴線にふれるものがあれば、そのイメージや色を借り、直線化してパターンづくりをすれば、人それぞれの縞ができる。同じものを見ても人それぞれの感性の違いが出てくるにちがいありません。

 織塾会員の腰塚眞由美さんは古いトンボ玉の縞模様に魅せられて、その美しさを織物で表現しようとしています。また織物を色の変化により、視覚的に立体化させることを試みています。今回は「写真を縞に」というテーマで縞づくりをお願いしました。(20〜22頁参照) 音や音楽の縞への転換も試みました。一つには音楽のイメージを縞に置き換えました。音のリズムや歌詩から色や幅を決定しての縞づくりです。二つには楽譜を縞にすることです。オタマジャクシを縞にします。

 私のとった手法はこうです。デザインコンピュータを用い、オタマジャクシ(音階)をモノトーンで入力し、テレビ画面に写し出します。音の長さが縞の幅になります。表われたモノトーンの縞に色をつけていきます。その音楽のイメージによりドレミのドは赤、レは紫、ミは青などと何万色もある色の中から選び出してカラーチェンジし、好みの縞になったらプリントアウトして糸をその色に染め縞を織ります。

出来上がった縞はそれが楽譜そのものですから、それを見てピアノも弾けるわけです。もし歌詩があればそれをつけて歌も唄えます。色彩豊かな楽譜を見ながら、みんなで歌うなど楽しい限りです。 三つ目には、「色も波長、音も波長」という考え方です。音譜の縞よりもっと緻密で繊細なものができることでしょう。

 また、1/fのゆらぎを取り入れた音楽の縞で、聴覚と視覚の快適性の比較などは面白くつくれた縞の一つでした。色にも品格があり「パートV」は一色の縞 縞づくりをして色をつけていますと、色にも品格のあることがわかります。

格差のある色を一つの縞に用いると、色どうしが喧嘩をして絶対にいい縞ができません。草木染の色は、どんな色をぶつけても馴染んで結構よい結果かでます。これはある意味で同格の色とも言えるのでしょう。 このようにして縞をつくっていますと縞に名前がつけられ、例えば「朝焼けの縞」のワンピースでショッピングに出かけ、友達の結婚式には「ドボルザークの新世界」のスーツを着ようとか、夢が膨らみます。

 「今日の絵画は、さらに彫刻的でなくいっそう音楽的になって、ますます捕らえにくくなって、ついには間違いなく色彩≠ノなるだろう」ファン・ゴッホ 「クレーは……一番重要な並行関係を音楽と美術の絶対性の類似にあることを突き止めた」パウル・クレー(『絵画と音楽』) 「縞とはすべてリズム、いや音楽ですらある。それ故あらゆる音楽と同じように調和と快楽の限度を越えると騒音や激しい爆発、さらに狂気へと行きつく」ミシェル・パストゥロー(『悪魔の布』) 縞展「パートU」は、縞は二色以上の色を直線で区分し、縞と縞の色が複数であるとして縞づくりを行ってきました。「パートV」ではあえて色を捨て、素材・織組織・織条件を変えることによって縞を表現してみようと「一色の縞」をテーマにしました。

 無彩色や同色の糸でも、紡績糸とフィラメント糸、生糸と練糸、太細・撚糸の違い、密度の差、織物組織、繊維の種類(絹・毛・綿)、などによりいろいろな縞ができます。黒い色といわれるものでも、青味・赤味の黒、緑の黒髪の黒などがあり、つくる者にとって一色の縞≠ルど力が発揮でき面白い縞はないのではないでしょうか。(桐生織塾主宰/むとう・かずお)  

 

 

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