この「桐生の民話集・河童とアメ玉」は産経新聞社の企画連載物「ふるさとの民
話と伝説」に掲載された私の分担分30編の民話に、少々加筆して一冊にまとめ
あげたものです。
わずか30編の民話ではありましたが、週に一回ずつ、それも七人で互いに分担
しあっての掲載でしたので、私の分担の民話が紙面に掲載された期間は、昭和六
十三年六月一日から、平成四年一月二十九日までの、四か年と八箇月にわたりま
した。
そのため民話の地の様子が多少変容してしまった所が何箇所か見受けられ
ましたが、今回の発行に際しましては、新聞掲載時の内容を尊重することにしま
した。そして民話の末尾に多少の説明を付加して、それを補ってみることにしま
した。
紙面での民話紹介は、私の文章表現の拙さから、現地の採話内容を十分に表現で
きませんでしたが、幸いにも、その表現不足は、「もりた・なるお先生」の温か
みのある素晴しいイラストによって、十二分に救っていただくことができまし
た。
それだけに、私は、拙い文章表現の民話を産経新聞社よせていながら、それ
が紙面に掲載される日を心待ちするようになっていました。いつの間にか、もり
た先生の素晴しいイラストを目にすることが楽しみになっていたのです。
それだけに、今回この「河童と・・・」の発刊に際し、もりた先生が、先生のイ
ラスト使用を快くご承諾くださいましたときは、本当にうれしく、なたありがた
く、喜びでいっぱいになりました。(<註>釈迦の湯のイラストのみわたべ・じ
ゅん先生の作品)
最近はうれしいことに、民話に目を向ける人の数が、確実にふえてきています。
しかし、年ごとに消えてゆく民話も、また多いーーー。これが現実です。それだ
けに文章表現の巧拙はとにかくとして、一つでも多くの民話を活字化しておくこ
とが、今の時点では何よりも大切だと、私は考えております。
この考え方にたっ
て、拙い表現内容であることも顧みずに、今回「河童と・・・」の発刊に踏み切
ったものです。
ご一読くださいまして、お気づきになりました内容の不備・誤り等は、ぜひと
も、ご叱声・ご訂正くださいますよう、よろしくお願いいたします。
また、この
小冊子をお読みいただいたのを、契機に、ご存じの民話を一話でも多く保存・継
承・記録して頂けるならば、本当にうれしい限りです。
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なお、この「河童とアメ玉」という書名は、父と子の愛情を話の中心に取り上げ
た、数少ない父子物語のストーリーに心を引かれて「命名」したものです。祖先
の心を心としてご一読いただけたならば大変幸甚に存じます。
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終になりましたが、今回の発刊に際しまして、いろいろとご便宜をお与えくださ
いました、「産経新聞社」と、素晴しいイラスト使用を快くご承諾くださいまし
た「もりた・なるお先生」に重ねて感謝を申し上げて、むすびといたします。
平成5年 初秋 著者 しるす